Q:依然見た映画で、玄関ドアの開き方についてのトラブルがストーリに出てくるものがありましたが、ドアを開く方向には決まりがあるのでしょうか。

ドアは「入る方に開く」(内開き)という原則があります。すなわち、部屋の内側に向かって開くのが一般的です。しかし、場合によっては逆のほうが使い勝手のよい時もありますから、あくまでも原則です。

問題の玄関ドアですが、日本では玄関ドアのほとんどが外開きになっています。玄関ドアも、お客を招き入れるという意味では、内開きにするべきでしょう。外開きでは、ドアを開けるとお客さんを払いのける形になってしまいます。ではなぜ内開きではなく、外開きになっているのでしょうか。それには大きな理由があります。

その映画では、それは日本の玄関スペースが狭いためで、玄関を広めにすればいいというようなことだったと思います。狭い玄関でドアを内開きにすると、脱いである靴をドアが掃いてしまいます。しかし、確かにそれもひとつの理由ではあるのですが、それほど重大な理由ではありません。それだけが理由ならば映画のように玄関を広くすればすむことです。

玄関ドアを外開きにする最大の理由は、ドア下からの雨水と隙間風の浸入を防ぐためです。外開きの玄関ドアでは、玄関の床面と玄関ポーチの床面との間に段差があります。その段差(アゴ)の部分がドアを閉めた時の戸当たりになるわけです。内開きの場合はドア下部に戸当たりになる部分を取れませんから、ドア下の隙間から雨水や隙間風が浸入してしまいます。

玄関をどうしても内開きにしたいならば、雨水や隙間風が入らないようにしなければなりません。そのためには、まず玄関ポーチを広く取り、壁で囲って、台風などの場合は仕方ないですが、ちょっとした吹降りの雨や、冬の北風が直接玄関ドアに当たらないようにします。更にドア下部にフェルトやブラシ、ゴムなどを取り付けます。ただし、このようにすると、ドアが重くなり開け閉めが不自由になります。また、開閉時にドアが床を掃く音がします。逆にゴムなどを玄関床の方に取り付ける方法もあります。この方法ですとドアの開閉も楽ですし、音の発生も少なくてすみます。ただし、床面にゴムなどのライン状の出っ張りが出てしまいます。それはあまり見栄えのいいものではありませんし、つまずく危険もあります。

マンションなどの集合住宅の玄関ドアは、雨や風が当たる心配のない屋内ドアの場合でも外開きになっています。これはドアの開き方についての別の原則によります。それは、避難路にあるドア(非常ドアなど)は避難する方向に開かなければならないというものです。集合住宅では、玄関は火災などが発生した時には避難路になります。ですから外開きにしなければなりません。

これら以外にも、住宅で外開きのドアを用いることの多い場所があります。それは便所です。スペース的に狭いということもありますが、それにともなうほかの理由があります。血圧の高い方などが便所内で倒れることがあります。内開きの場合、内側で倒れた人が邪魔になり、ドアを開けられなくなってしまう可能性があります。それによって重大な結果を招くことも多々あります。それを防ぐために、便所のドアを外開きにすることが多いのです。内開きでも外開きでも、便所のドアは内側から鍵がかかるようになっていますので、そのような場合に外からも鍵が開けられるようにしておくことも必要かもしれません。

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