Q:確か、「いい家がほしい」というタイトルの本だったと思うのですが、家づくりの大切なポイントとして外断熱工法を選ぶとありました。外断熱工法は確かに優れた工法だとは思うのですが、それをうのみにするのはどうかと思うのですが。いかがなものでしょうか。それから外断熱工法の欠点を教えて下さい。

外断熱工法はもともとRC造のための工法です。最近は木造の住宅についても外断熱工法が言われていますが、RC造の場合とは基本的にまったく異なります。ですから、木造の場合は「外断熱工法」とは言わないという人もいます。確かに断熱層を壁の屋外側に設けるという意味では外断熱ですが、「外断熱工法」がコンクリートの大きな熱容量を利用する工法であるという点でまったく異なります。

ご質問は木造の建物についてだと思われますので、ここでは木造の外断熱工法についてお話しします。木造に関しては、RC造ほどの利点はありません。しかし、建物の外側を断熱材でくるんでしまうのですから、断熱性は高くなります。ただし、壁体内に断熱材を充填する断熱材充填工法と性能的にそれほど大きな差はないようです

木造の外断熱工法の欠点は、技術的な問題だと思います。外断熱工法は、建物を断熱材ですっぽりと覆ってしまう工法です。ですから、基本的に断熱材できちんと建物を覆うことができなければなりません。シンプルな形態の建物ならば可能なのですが、実際の住宅では、庇やバルコニー、出窓などがあります。これらは外壁の外に突き出しますから、その部分で断熱層を切ってしまいます。このような部分は断熱切れとなり、ヒートブリッジ(熱橋)を生じさせる危険があります。これらを断熱切れを全く生じさせることなく施工することは、現時点では技術的に難しいと思います。

断熱切れという点では、断熱材充填工法のほうが大きいではないかという反論があると思います。確かに、壁体内には柱や間柱などがあり、その部分は断熱切れになります。しかし、建物全体が同じ状態なので、建物全体では均一な状態だといえます。すなわち、建物内でそれが原因で大きな温度差を生じることは少ないわけです。それに対して、外断熱工法で断熱切れがあると、その部分で大きな温度差を生じる危険があります。大きな温度差が生じるということは、その部分で結露を生じる可能性があるということです。

また、木造の外断熱工法の場合は、断熱材の外側に通気層を設けなければなりません(RC造の場合は、通気層を設けない方法もあります)。壁の通気層を通った空気は、屋根裏の通気層を通り、棟などに設けた換気口から外へ出ます。この通気層が有効に働かなければなりません。建物や屋根の形状によっては安全で有効な通気層が取りにくいものもあります。

大きな断熱性能の家を求めるのでなければ、内断熱で十分だと思います。きちんと施工すれば、北海道でもまったく問題ありません。

外断熱にする場合は、完全なものにしなければなりません、中途半端なものはかえって危険です。そのためには建物の形態などに制限が出ます。外壁面に凹凸をつけない。出窓は避ける。外断熱で使用される断熱材のほとんどが曲面に施工できないので、曲面壁は作らない。バルコニーを設ける場合は、建物本体から切り離し、独立させる。建物本体からバルコニーを支える構造体を出す場合は、構造材と断熱材の隙間を、吹き付けて施工する断熱材で塞ぐ。構造材は木でなければなりません。鉄骨などはだめです。庇などは通気胴縁で支えられる軽量なものにするか、バルコニーと同じように、吹き付けて施工する断熱材できちんと処理しなければなりません。通気層は空気の流れをきちんと確認し、換気口から雨水が浸入し建物を傷めることがないようにしなければなりません。(これは内断熱でも外部に通気層を設ける場合は、おなじです。)

木造で外断熱を推薦する本がたくさん出ていますが、そこに紹介されている平面図を見ると、技術的に疑問のものがたくさんあります。完全に外断熱処理されているとは思えないものが多々あります。

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