Q:在来工法と2×4の構造形式の違いを(工法についての利点、難点や各工法の特徴)教えて下さい。

在来工法と2×4とは、構造に対する基本的な考え方が異なります。在来工法は軸組工法と呼ばれ、柱と梁の組み合わせによって構造体を構成してゆくものです。地震などの水平力に対しては、筋交いを入れた耐力壁(筋交いを入れない体力壁もあります)を設けて対応します。

2×4は枠組壁構造と呼ばれ、木枠パネルによる壁によって構造体を構成してゆきます。この壁が地震などの水平力に対しても働きます。2×4の場合は、床や屋根もパネル化されます。在来工法が柱や梁といった線材によって構成されるものだとすると、2×4は面によって構成する構造体といえるでしょう。

垂直方向の力に対しては差がありませんが、水平方向の力に対しては線よりも面のほうが強いことは明らかです。それ故、以前は「地震に強い2×4」と言われました。しかし神戸の地震の後、木造建築、特に在来工法に対する考え方が変わり、地震に強い在来工法の研究が進み、さまざまな工夫がなされてきました。その結果、在来工法も柱に構造用面材(構造用ベニヤなど)を打ち付けることにより、地震に対して面で対抗してゆくような構造方式になってきました。床もパネル化することによって剛性を増し、水平力に強い床にすることが多くなってきました。

このような動きは3階建ての木造住宅の普及とも関係しています。アメリカでは2×4による5・6階建ての建物が数多くあります。こうしたことから日本でも木造の3階建てを2×4で実現しようという動きが起こり(それまでは木造では2階建てまでしか許可されていませんでした)、それに対応した形で、3階建ても可能な在来工法として、現在の在来工法が出来上がってきました。その結果として、在来工法が限りなく2×4に近づき、その差がほとんどなくなってきました。基本的な工法は在来工法なのですが、考え方は2×4にきわめて近い、そのような工法に在来工法はなってきています。

このような在来工法の変化により、以前は2×4よりも在来工法のほうが大きな開口部を設けることが出来る、構成の自由度が高いといった利点がありましたが、それがなくなってきました。開口部に関しては、2×4では開口部の上部にまぐさ(開口部の上の壁が落ちてこないように支える横材)を設けなければならないのですが、開口部の幅が大きくなるとその分まぐさも大きくしなければなりませんので、開口部の高さが制限されてきます。その点では、在来工法のほうが開口部の高さを高く出来る利点があります。ただし、まぐさを設けないですむ方法もありますので、その方法を使えば2×4でも高い開口部をとることが出来ます。トップライトを設ける場合に、2×4では屋根パネルとの関係でその取り方に制限の生じる場合があります。

建築構造に関する基本的なことは、HPの「建築構造の話」に書いていますので、そちらも読んでいただけたらと思います。

2×4では部材寸法や使用金物などすべて規格化されており、施工方法もきちんと定められています。マニュアル社会であるアメリカで発展した工法ならではと言えるでしょう。その点しっかりした工法と言えますが、自由度が少ないと言うことも出来ます。在来工法でも一応規格化されている部分もありますが、この点に関してはずっとルーズです。在来工法は従来から行われてきた工法であり、その経験知に頼るという考え方が強くあります。このルーズさが信頼性に対する不安な点ともなるのですが、意欲的な設計者やデザイナーにとっては逆にこれが自由に工夫できる部分にもなるわけです。

マニュアル化された2×4では、職人の技術も高度なものは必ずしも要求されません。従来の在来工法では、職人の技術の熟練度が重要な要素でした。しかしながら今日では熟練した職人が少なくなったこともあり、機械化できる部分は機械化するなどして、在来工法でも熟練した技術を必要としなくなってきました。これは寂しいことではありますが、時代の流れと言えるでしょう。

以上のことから、在来工法と2×4とでは、現在ほとんど差がないのがお分かりになると思います。実際、今日一般に建てられている木造建築のほとんどが、どちらの工法を採用しても同じように出来上がる建物です。コストに関しても、性能に関しても大差ありません。在来工法でなければ難しい伝統的な和風の建物を建てるといった場合や、太い柱や梁を表現した建物を建てるような場合を除いて、どちらの工法を採用しても大きな差がありません。在来工法を採用するか、2×4を採用するかは、施工を依頼する業者がどちらを得意としているかによって決定されることもよくあります。

今日では、在来工法を発展させた新しい工法も開発されています。エンジニアリングウッド(工場生産された木材のことで、集成材など)を用いた工法などがこれに当たります。このような工法を用いることにより、新たな可能性も出てきました。

在来工法と2×4との違いで最近注目されていることに、断熱性能に関するものがあります。厳密には、断熱性能ではなく気密性能に関することなのですが、結果として断熱性能と深くかかわってきます。従来の在来工法の場合、壁体内と床下や天井裏とが連続しており、そこに気流が発生することにより、気密性が低下し、断熱性能の低下をもたらします。またこれが、壁体内の内部結露の原因ともなります。2×4の場合は、壁が上下で密閉されますので、壁体内に気流が発生することはありません。

これは防火性能とも関係があり、在来工法の方が火のまわりが速いという結果が出ています。湿度の高い日本の気候風土に対して、壁体内を空気が流れ、構造材を常に乾燥させておくというのは、以前は優れた方法だったのですが、生活環境や建築工法などが変化し、現在ではそれを欠点とみなす考え方もあります。それに対処するため、在来工法を改良した工法が提案されていますが、まだ寒冷な北海道などを除いて、一般的に普及しているとは言えないようです。

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