コーポラティブハウスを建てよう

あらかじめ居住者が集まり、建設組合を結成し、設計の最初の段階から参加しながら集合住宅を建てていくことができます。これをコーポラティブハウスと呼びます。この方法を使うと、独立住宅を建てるのと同じような感覚で集合住宅を建てることができます。

家を建てるときに大きな問題となるのが土地の取得です。すでに土地を持っているならば別ですが、都市部やその近郊では建設資金のかなりの部分をこの費用にあてなければなりません。特に都市部では土地の価格が高いため、狭い敷地を手に入れるのがせいいっぱいというのが現状です。最近、狭い敷地に立てた狭小住宅が話題になっています。狭小住宅は設計者にとってもやりがいのある、面白い仕事です。しかし、このような住宅は狭い敷地に目いっぱいに建てられています。街中がこのような小さな家で埋め尽くされた状態を想像してみてください。街並みの景観や住環境に対して、これが必ずしもよい結果をもたらすとは思われません。

こうした狭小敷地の多くは、もともとは1軒の住宅が建っていた広い敷地で、それが細分化されて分譲されたものです。以前は広い庭を持ち、そこにはたくさんの樹木があったかもしれません。これらの樹木は、土地が細分化される際にすべて伐採されてしまいます。こうした状況は、すべて独立住宅を建てるという前提で行われます。ここに集合住宅を建てるならば、状況は大きく変わってきます。敷地が細分化されずにすみます。独立住宅を建てる場合は細分化された狭小な外部空間しか残りませんが、集合住宅にするとかなりの外部空間を取ることができます。そこには植栽を施すこともできますし、憩えるようなスペースをとることもできます。また、こうしたスペースが周囲の住環境へ及ぼす効果も計り知れません。

それ以外にもコーポラティブハウスを建てるメリットがあります。まず、建設コストを下げることができますし、設計料も安くなります。将来のメンテナンスコストも低減でき、計画的なメンテナンスが可能になります。逆に、集合住宅のデメリットは、戸建住宅では許される勝手気ままが幾分か制限されるということでしょうか。

コーポラティブハウスを建てる際にもっとも大変なのがメンバー集めでししょう。あらかじめ、よく知った気の会う仲間が集まって建設するなら問題はないでしょうが、全く見ず知らずの他人をメンバーとして集めなければならないとなると、それは大変な作業になります。特に建物の規模が小さくなればなる程、メンバー間の親密度は高くなりますから、人間関係のトラブルや気が合う合わないといった問題も発生しやすくなります。規模の小さいコーポラティブハウスほどメンバーの選定には慎重さが必要になってきます。現在ではネットでメンバーを募ることもできるようになりましたが、この場合も実際に会ってメンバーとしてやって行けるかどうか確認する必要があるでしょう。

メンバーが集まったら建設組合を結成します。この建設組合が中心となって、設計者の選択、設計参加、施工業者の選択を行い、計画を進めて行きます。 一般の集合住宅の場合は、設計段階ではまだ居住者が決定していませんので、不特定多数を対象とした設計になりますが、コーポラティブハウスの場合は居住者があらかじめ決まっていますので、居住者の個々に合った設計が可能になります。

ただし、集合住宅ですので設計上いくらかの制約をうけます。それは個々の住戸に関する問題ではなく、主に構造と設備に関係する部分です。構造体の位置は建物全体の計画によって決定されるもので、それによって各住戸の間取りが制限されてきます。設備では配水管などの配管スペースが問題となります。上下階をつなぐ縦配管の位置が決定されますと、それによって各住戸の水まわりの位置がほぼ決まってしまいます。メーター類の位置も決まってきます。設備に関しては、将来のメンテナンスなども考慮しておく必要があります。しかし、それ以外の部分に関してはかなりの自由度がありますので、居住者それぞれの希望にそった住居をつくることができます。建物が完成した後は、建設組合がそのまま管理組合に移行し、建物の管理メンテナンスを自主的に行ってゆきます。

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