家を買おう

住宅を購入する場合、いくつかの選択肢があります。ひとつは新築物件にするか中古物件にするか、もうひとつは独立住宅(建売住宅)にするか集合住宅(マンション)にするかということです。中古物件を購入してそれをリフォームして住む、あるいは将来建て替えることを前提として中古の独立住宅を購入するという方法もあります。

新築物件の場合、建物が完成する前に売り出されることも多く、その時点で売れてしまうこともあります。この場合はパンフレット、図面、モデルルーム等を見て判断することになります。しかし、実物を見るに越したことはありません。ただし、実物を見ても、見える部分を判断することはできますが、見えない部分を判断することは難しいでしょう。完成した建物を見ることはできても、建設途中はなかなか見ることができません。たとえ見ることができても、専門的な知識をいくらか持っていないと、ほとんど良し悪しを判断できないと思います。そこで、新築物件を購入する際には、信頼できる業者が建てたもの、信頼できる業者が販売しているものをお薦めします。チラシ、パンフレット等に販売会社名、住宅供給会社名、施工会社名、設計事務所名が明記されているものについては安心できると思います。その他、一般的に高額物件はきちんとしているといえるでしょう。安物は絶対にダメと言いきれます。たしかに企業努力や工法を工夫してコストを下げることもできますが、ある程度以上の質を持った建物を作るには、それなりのコストがかかります。今すぐに安い物件を購入するよりも、数年我慢してもう少し高額の物件を購入したほうがお得かもしれません。

ただし、信頼できる業者の高額物件でも100%安心というわけにはいきません。住宅といえども商品ですので、売れるということが最大の前提です。売れる商品を作るためには、直接購買意欲に結びつかないような部分(購入者に分かりにくい部分)は軽視されがちになります。建売住宅の場合、建物の構造が軽視されがちです。建物にとって構造は非常に大切なものですが、同時に制約するものでもあります。構造によって間取り等が制約されることも多々あります。建売住宅では、間取りのほうが構造より優先される傾向があります。建売業者は、構造に間取りを合わせるよりも、間取りに合わせて構造の辻褄を合わせる方を選びがちです。実際に建っている家を見て、構造を気にする人がどれだけいるでしょう。やはり間取りのほうが気になりますよね。だからといって、建物がつぶれてしまうわけではありませんし、多少の地震で壊れることはありません。しかし、神戸で発生したような大きな地震に対しては、保証の限りではありません。

しっかりした物件かどうかを判断する方法のひとつとして、その物件が中間検査竣工時検査を受けているかどうかを確認するという方法もあります。これらの検査を受けていれば検査済み証が発行されていますので確認することができます。住宅金融公庫の融資を利用する場合はこの検査が必要ですので、住宅金融公庫を利用できるかどうかを確認してもいいでしょう。銀行のローンを利用する場合でも、建前としてはこれらの検査が必要ですが、実際には検査無しで融資を受けられることもありますのであてになりません。ただし、これらの検査を受けていないから全てダメとはいえません。これらの検査を受けない理由はいくつか考えられます。単に工期を短くしたいということかもしれません。もちろん、工事に欠陥があることも考えられます。中間検査は骨組ができた段階で実施されますので、構造や工法に欠陥があればその時点で指摘されます。それ以外に検査を受けない理由として、建物が違法建築である場合が考えられます。このケースはかなりあると思います。違法といっても、大きな違反を行っているケースはまれです。ほとんどがささやかな違法建築といえるでしょう。これらの法律違反は、消費者に対して建物をより魅力的にするために行われるのがほとんどですので、購入者の不利益になることはめったにありませんが、違法であることに変わりはありません。違法建築であっても確認申請は受理されているはずです。確認申請時には合法な建物として申請しているはずですので、確認申請に添付されている図面と現状を比較することで、違反箇所を確認することができるでしょう。(確認申請書類は閲覧することができます。)

構造がきちんとしているかどうか、一般の方が判断するのは難しいと思います。ひとつだけ判断のヒントになる方法をお教えします。それは各階の平面図を重ねてみることです。上下の階で壁の位置がほぼそろっているかどうか見てください。その場合に、縦方向、横方向の両方向でそろっていることが必要です。もちろん上下の階で間取りが異なりますから、同じ位置にすべての壁がくることはありませんが、構造をきちんと意識した建物であれば、上下で壁位置をそろえてある部分があるはずです。ついでに、水まわりの部分が上下階でほぼ同位置にあるかどうかも見ておくといいでしょう。建築構造については、「建築構造の話」のページをご覧ください。

マンションを購入する場合、最近では管理を買うということが言われるようになりましたが、管理体制がきちんとしているかどうかが重要になります。マンションの管理は、管理会社に依頼しますが、住民が管理組合を結成して自主的に管理するのが基本です。すべてを管理会社まかせにしてしまうのは問題です。特に管理費や修繕積立金の管理まで管理会社にまかせてしまうのは危険です。管理会社が倒産してしまい、こうした費用が戻ってこないというトラブルも発生しています。日常的な管理が重要なことはもちろんですが、将来のメンテナンスに関しても、きちんと長期修繕計画が立てられていること、そのための修繕積立金が適正な額であること、改修工事等がやりやすいつくりになっていることなどが重要です。修繕積立金が安いというのは決して喜ばしいことではありません。築10年程度のマンションで、一住戸平均月額1万円程度の修繕積立金が必要といわれています。このことは中古マンションを購入する場合も同様です。築20年を超えるマンションの場合は、設備機器をチェックすることも必要です。設備機器の寿命はほぼ20年といわれています。リフォームを済ませてある物件は別ですが、中古物件の場合は、状態の良い物件でもいくらかのリフォームが必要なものです。購入する際、リフォーム費用も考慮しておく必要があります。

中古の戸建住宅を購入する場合、床や壁や天井をはがしてみるわけにもいかないですので、その家がどのような状態であるかを正確に判断することは難しいと思います。少しでもその建物の状態をよく知るためには、リフォームされて内装等がきれいになっているものよりも、元のままの状態のものを選んだほうがいいかもしれません。リフォームのために壁や天井や床をはがしてみたらびっくりということも多々あります。外観が立派でいかにも高額な建物に見えても、このようなことはよくあることです。建物を見るときに、一般の方はあまり天井を見ないものですが、中古物件を見るときには、天井を良く見ることをお勧めします。雨漏りの跡などが見つかるかもしれません。床が傾斜していたり、建物がゆがんで柱が傾いていたり、床を踏むとふかふかしているような物件は、近い将来建て替えるのでない限り購入するべきではないでしょう。将来建て替えることを前提として中古の戸建住宅を購入する場合は、建物よりも土地で物件を選ぶべきでしょう。敷地の形状、高低差、方位、道路との位置関係、隣地との関係等を考慮する必要があります。水道、電気、ガス、排水方式等インフラに関する部分のチェックも必要です。その土地が、法的にどのような規制を受けているかも知っておかなければなりません。用途地域、建蔽率、容積率、その他その土地にかかる法的規制を確認してください。場合によっては、将来建て替える際に、現在建っている建物よりも小さい建物しか建たないこともあります。

最近、中古の住宅を購入し、それをリフォームする方も多くなってきました。私もそういった相談を受けることが多くなりました。その際、意外と図面のない物件を購入されている方が多いのに驚きました。確認申請書(確認済み証)のない物件は更に多いです。そういった物件の中には、ひどい違反建築物もありました。構造的に問題のあるものもありました。このような物件を購入された場合は、将来売却することが出来ないなどの問題が発生することも予想されます。もちろん欠陥住宅の可能性もおおいにあります。中古の戸建住宅を購入する場合は、基本図面や構造図面(木造の場合はないこともあります)、確認申請書(確認済み証があるかどうか確認してください。無い場合は要求してください。図面や確認申請書(確認済み証)の無い物件を購入することは避けた方がよいと思います。このような物件を販売すること自体が問題だと思います。

私の事務所では、家を建てたいと思っている方のために「家づくりカルテ」を作成しています。家の購入を考えている方のお役にも立てると思います。

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