家を建てよう

家を建てる場合に、昔ならば近所の棟梁に頼んで建ててもらうものでしたが、現在ではそのような棟梁も数少なくなりました。今日でも、近所の工務店に頼んで建ててもらうこともできますが、よほど親しい業者でないと、この方法は危険かもしれません。一般的な方法として、住宅メーカーに依頼する方法と設計事務所に設計依頼をする方法があります。

住宅メーカーに依頼する場合、各住宅メーカーは独自の工法とデザインで住宅をつくっていますが、それらは住宅展示場へ行けば見ることができます。ただし、住宅展示場にある建物がそのまま建つわけではありません。広い敷地があり、どのような建物でも建てられるというのなら別ですが、ほとんどの場合、敷地の制約があり、法的な規制もかかってきます。また、モデルハウスは1年程で建て替えられてしまう場合も多く、短期間そこに建っていればいいものとして作られていることがあります。これから何十年も建っていなければいけない建物とはおのずと違ってきます。同時に、モデルハウスは商品見本ですから、できるだけ多くの人に気に入ってもらう必要があります。そのためにあまり知られていないいくつかの秘密があります。たとえば、建設コストは一般に建てる場合よりもモデルハウスのほうが高いのが普通です。坪単価で100万円を超えるものも多いと思います。室内に置かれている家具や調度類のすべては専門家によってトータルにコーディネイトされています。室内の印象はこれらの家具調度類をも含めた全体によってつくられます。寝室のベッドなども小さめのものが置かれ、部屋を広く見せるようにしています

住宅メーカーが提供する住宅の長所は、安心感だといえるでしょう。大手の住宅メーカーならば研究施設も充実しています。住宅の耐久性や耐候性、自然災害に対するテスト等、性能面での信頼性は高いと思います。短所としては、工法が決まっているために形状によっては建設できない場合があることと、使用できる部品が限られてしまう場合があることです。ただし、この短所こそ住宅メーカーのデザインの独自性を生み出している部分でもあるわけですし、コストを下げながら性能を維持するために必要なことでもあるのです。

設計事務所へ設計依頼する場合の長所は、時間をかけてじっくりと家づくりができることです。もちろん短期間での設計を依頼することもできますが、それでは設計事務所も力を十分に発揮することができません。いい物をつくるためにはそれなりの時間が必要です。

設計事務所へ設計依頼するためには、まず設計事務所を選ばなければなりません。ところが、「設計事務所へ依頼したいのだが、なかなか依頼しにくい。」、「勝手なことをされてしまうのではないかと、怖くて依頼できない。」、「一度依頼してしまうと、気に入らなくても断りづらい。」等々といった話をよく聞きます。これは設計事務所側の責任でありますし、実際にこのような状況が一部にあることも事実だと思います。ともあれ、まず設計事務所(設計者)に連絡を取り、設計者に会って話をしてみることです。設計者が気に入らなかったり、うまくいかないと感じた時は別の設計者に会ってみる。これを気に入った設計者に会うまで繰り返すことです。少なくとも数人に会ってみるのがいいでしょう。もちろん住宅雑誌などで作品を見て、どうしてもこの人に設計してもらいたいというような場合には、迷わずその人に依頼するのが良いでしょう。ただし、途中でうまく行かないと感じたら、すぐに断りましょう。

設計者を選ぶ基準は、人それぞれだと思いますが、まずその人が気に入り、うまくやってゆけそうだという実感を持てることが大切です。よい設計者の条件として、話を良く聞いてくれる、希望を実現するために努力してくれる、丁寧によく説明してくれる、決して仕事を急がない等が考えられます。設計を依頼して1週間後には図面が出来上がっていたらとてもうれしいですよね。しかし、住宅の設計はそんなに簡単なものではありません。かといって、何週間も音沙汰なしでは困ります。少なくとも週1回程度の打ち合わせをしながら、じっくりと進めて行くのがいいでしょう。

基本設計に2〜3ヶ月、実施設計に2〜3ヶ月、計4〜6ヶ月の設計期間を見ておけばいいでしょう。家が完成するのはさらに5〜6ヶ月の工事期間を経た後になります。家づくりは1年がかりの大仕事です。

ところが、設計事務所の中には、基本設計1ヶ月、実施設計1ヶ月というところもあります。2ヶ月では十分な設計は不可能です。しかし、そのような設計事務所を責めることはできません。なぜならば、住宅の設計は仕事としては魅力的でやりがいのあるものですが、事務所経営の上から言うと、ほとんど儲けのない仕事だからです。場合によっては、赤字覚悟の仕事になってしまいます。独立住宅の場合、設計料は総工費の10〜15%程度が一般的です。地方にもよりますが、東京近辺では住宅1件の総工費は平均3000万円前後だと思います。3000万円の総工費に対して、設計料は300万〜450万円になります。完成まで1年間とすると、月額にして25万〜37.5万円程度の事務所収入にしかなりません。これでは事務所経費も人件費も払えません。そこで住宅中心で活動している設計事務所では、年間に多数の物件をこなさなければなりません。そのためには、1物件にかける時間を減らすか、いくつかの物件を同時進行させて行かなければなりません。どちらにしても、ひとつの物件に投入できる時間とエネルギーは分散されてしまいます。いかんせん、これが設計事務所の実情です。こうしたことも設計依頼する際に、頭の隅に置いておくといいかもしれません。

設計事務所選びには十分な時間をかけることが大切です。設計を依頼した後でも、うまく行かないと思ったらすぐに断りましょう。断るならば早いほうがいいです。ぐずぐずしているうちに設計はどんどん進んでしまいます。このような状態は、両者にとって不利益をもたらすだけです。

家を建てる場合に、独立住宅ではなく、集合住宅を建てることもできます。あらかじめ居住者が集まり、独立住宅を建てる感覚で集合住宅を建てる方法があります。これをコーポラティブハウスと呼びます。

私の事務所では、家を建てたいと思っている方のために「家づくりカルテ」を作成しています。家を建てようと思っている方で興味のある方はご請求ください。

ROOMS買う家づくりカルテ